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ロ.承諾の効力発生
(イ)承諾の効力発生に関する原則申込の場合と同様に、申込の撤回、申込の取消、申込の拒絶、反対申込等の意思表示も、隔地者に対する場合、または対話者間の場合に関係なく、いずれもこれが相手方に到達したとき、その効力が生ずる。申込の承諾は、原則として、申込者に通知されなければならないのであり、その効力発生についても、他の意思表示と同様に、理論的には到達主義が適用されるものと考えられる。
しかし、現実に、承諾の効力発生の時期に関する原則は国により異なり、?発信主義、?到達主義または?了知主義がとられている。「発信主義」は、例えば、被申込者が承諾の手紙または電報を発信した時にその効力が発生したとみなすもである。「到達主義」は、申込者が実際に知ったか否かにかかわりなく、承諾が指定された宛先に到達した時に効力が発生するという原則である。「了知主義」は、申込者が実際に承諾を知った時にその効力が発生するという原則である。
(ロ)郵便・電信による承諾郵便および電信による承諾の効力発生の時期について、発信主義を採択している国がある。英米のコモンローにおいては、この原則は19世紀に確立し、「メールボックス・ルール」(mailbox rule)または「ディスパッチ・ルール」(dispatch rule)と呼ばれている。この原則では、承諾の通信手段として、郵便または電信が指定されている場合、あるいはこれを使用することが当然であると考えられる場合には、正確な宛名の記載と適正な送信料の支払等を条件として、承諾する旨の手紙がメールボックスに投函された時または電報が発信された時に、その効力が発生するので、その時および場所で契約が成立したものとみなされる。英米のコモンローの発信主義は無条件であるから、手紙または電報の到着の有無に関係なく、これが発信された時に効力が生ずる。
(注)ここで言う「メールボックス・ルール」は、上記のように、手紙を「郵便ポスト」に投函することを意味するのであり、名宛人の「郵便受け箱」や「私書箱」で受取ることではない。

 

 

 

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